【救急看護の基礎知識】脳梗塞

【救急看護の基礎知識】脳梗塞

脳梗塞急性期

脳梗塞の症状は急性期にもっとも強く、その後徐々に改善していきます。これは、壊死に陥った脳組織が腫脹して、周囲の脳組織も圧迫・障害していることによるものです。腫脹が引いていくとともに、周囲の組織が機能を回復して症状は固定していきます。ただし、腫脹や、壊死組織から放出されるフリーラジカルは周囲の組織をも壊死させる働きがあるためこれらを抑制することが機能予後の向上につながります。

急性期は血圧が高くなります。場合によっては(収縮期血圧で)200mmHgを超えることもあります。これは、虚血部位に対して血流を送り込もうという生理的な反応であり、無理に降圧を図ってはいけません。降圧しすぎると、梗塞範囲を広めるおそれがあります。降圧薬、不用意な頭位挙上は脳循環血流を悪化させ、再発や症候増悪をおこす可能性があります。症状が安定するまで少なくとも24時間はベッド上安静とします。

発症から3時間以内

1.血栓溶解療法(経静脈内投与)
発症から3時間以内でCTスキャンで梗塞所見がまだ出ていない場合に組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)を静脈注射し血栓を溶かします。
しかし、発症3時間以内に病院で治療開始できる例は少なく全体の2-3%でしかありません。また3時間以内であっても患者さんの状態で実施できないことも多くあります。またあまり軽い症状の場合は行いません。
副作用は脳出血の危険があることです。

6時間以内

2.血栓溶解療法(経動脈的投与)
発症から6時間以内に治療が開始でき、CTで梗塞所見がまだ認められない例で詰まった脳血管にカテーテルを入れt-PAによる血栓溶解を行います。
脳血流が35%未満と非常に低くなっている場合にこれを行うと脳出血を起こすことがあります。血栓溶解は心原性脳塞栓に有効です。

48時間以内

3.抗凝固療法
発症48時間以内の脳梗塞アルガトロバン(薬品名ノバスタン、スロンノン)投与は進められています。脳血栓症に特に有効です。

5日以内

4.抗血小板療法
4-1.オザクレルナトリウム(薬品名カタクロット、キサンボン)は発症5日以内の脳血栓症の症状を改善させます。
4-2.アスピリン160-300mgの経口投与は発症48時間以内の脳梗塞の治療法として薦められています。

症状

片側の麻痺

通常は身体一側の脱力、不器用さ、または重い感じを示します。麻痺は:運動の障害を意味し、もっとも頻度の高い症状が麻痺です。中大脳動脈の閉塞によって前頭葉の運動中枢が壊死するか、脳幹の梗塞で錐体路が壊死するかで発症します。

多くの場合は、片方の上肢・下肢・顔面が脱力または筋力低下におちいる片麻痺です。幹梗塞では顔面と四肢で麻痺側が異なる交代性麻痺を来すこともあります。

一側のしびれ感

通常、身体一側の感覚鈍麻、異常感覚、感覚線維、または頭頂葉の感覚中枢が壊死することで出現します。感覚の鈍化または消失が起こるほか、慢性期には疼痛が出現することがあります。

言語障害

言語了解や発語の障害(失語症)や不明瞭な言語(構音障害)を症状とします。喉頭・咽頭・舌の運動にも麻痺や感覚障害が及ぶことで嚥下や発声機能にも障害が出現します。構音障害は後述する失語とは違い、脳の言語処理機能は保たれながらも発声段階での障害のためにコミュニケーションが不十分となっているものです。嚥下障害は、摂食が不十分となって社会復帰を困難にしたり、誤嚥によって肺炎の原因となるなど影響が大きいです。

嚥下・構音障害を起こすような咽頭・喉頭機能の障害は脳幹の延髄の障害に由来することから球麻痺と呼ばれる(延髄は球形)が、より上部から延髄へいたる神経線維の障害でも類似した症状がみられるため、これは仮性球麻痺と呼ばれています。

片側の失明

痛みのない一眼の視力消失、しばしば「カーテンがさがる」と表現されています。

めまい

安静時に持続するめまいがあります。めまいのみでは非血管性の疾患のありふれた症状です。したがって少なくとももう1つの一過性脳虚血発作あるいは脳梗塞の症状も存在することが必要です。

失調

平衡機能の悪化、歩行時のつまづき、よろめき、身体一側性の協調運動障害があります。小脳または脳幹の梗塞で出現し、巧緻運動や歩行、発話、平衡感覚の障害が出現します。これに関連してめまいが出現することもあります。

意識障害

脳幹の覚醒系が障害された場合などに意識レベルが低下するほか、広範な大脳皮質の破壊でもみられます。それがなくても、急性期に脳の腫脹などによって全体的に脳の活動が抑制され、一過性に意識レベルが下がることがあります。ラクナ梗塞で意識障害を来しにくいのは、梗塞範囲が小さいため腫脹など脳全体への影響が小さいことによります。

高次脳機能障害

失語や失認をはじめとした多彩な高次機能障害が出現することがあります。半側空間無視(空間のうち左右どちらかが意識からはずれてしまう)が多くみられます。これは大脳劣位半球頭頂葉でみられるものですが、右利きの人間の95%は劣位半球が右にあることから、ほとんどは「右利きで左片麻痺」の患者にみられる症状であると言えます。逆に失語は優位半球の障害でみられるもので、「右利きで右麻痺」の患者にみられることが多い症状です。

 

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