【救急看護の基礎知識】くも膜下出血

【救急看護の基礎知識】くも膜下出血

目次

くも膜下出血とは

クモ膜下出血(蜘蛛膜下出血、クモまくかしゅっけつ、クモまっかしゅっけつ、Subarachnoid hemorrhage; SAH)は、脳を覆う3層の髄膜のうち2層目のクモ膜と3層目の軟膜の間の空間「クモ膜下腔」に出血が生じ、脳脊髄液中に血液が混入した状態をいいます。内臓としての脳は、重さの割合に対しては大変多くの血液を貰って(流れて)働いているのですが、表面(くも膜下)に比較的太い栄養血管がある事が特徴で、他の多くの内臓とは異なっています。もちろん一部の血管は、脳を貫いて内部へ栄養を送る働きを担っています。これらの血管は脳内出血と関係が深くあります。全脳卒中の8%を占め突然死の6.6%がこれに該当すると言われています。高齢者よりむしろ壮年期の人に多いとされています。また一度起こると再発しやすいという特徴があります。

Gread

Grade0 非破裂動脈瘤
Grade1 無症状、または軽度の頭痛と項部硬直
Grade1a 急性の髄膜刺激症状はないが神経脱落症状が固定
Grade2 中等度以上の頭痛、項部硬直はあるが脳神経麻痺以外の神経脱落症状はない
Grade3 傾眠、錯乱、または軽度の神経脱落症状
Grade4 昏迷、中等度の片麻痺、除脳硬直のはじまり、自律神経障害
Grade5 深昏睡、除脳硬直、瀕死状態

原因

脳動脈瘤の破裂

内因性のクモ膜下出血の多くを占めます。脳動脈瘤は動脈の一部位が膨らみ、その血管壁が脆弱となったものです。その種類により袋型(Saccular aneurysm)と紡錘型があります。脳動脈瘤を持つ人において、運動、怒責、興奮などによって脳への血圧が上昇すると動脈瘤の一部が破れて出血を起こします。出血自体はほんの数秒であるが血液は急速にクモ膜下腔全体に浸透し、頭蓋内圧亢進症状や髄膜刺激症状を起こします。

脳動静脈奇形の破裂

脳動静脈奇形は脳の動脈と静脈が先天的にシャントを形成している奇形で、脆弱な静脈壁に大きな血圧がかかることから出血を起こしやすい状態となります。若年性のクモ膜下出血では最も多い原因です。

外傷による出血

脳は脊髄液の中に浮いた状態で存在しており、脳全体の比重は脊髄液よりわずかに重い臓器です。このため、頭部に衝撃を受けると脳は頭蓋内で力の作用点に対して寄る形で移動します。この時、作用点の反対側では脳と硬膜を結ぶ静脈が切れて出血します。

リスク因子

喫煙、高血圧、アルコール多飲歴などがリスク因子としてあります。隔世遺伝性の病気であり、祖父母の代で発症した者がいる場合は発症する確率が上がります。

症状

突然の激しい頭痛、嘔吐。「金属バットで殴られたような」と表現される頭痛が多いです。minor leakの場合は頭痛はそれ程強くないことが多くあります。また頭痛の発症は突然起こるものであるので、患者にいつ頭痛が起こったか聞くと具体的な時期の回答が得られます。この頭痛は1 – 2時間で消失することはなく、数日間持続します。脳内血腫を伴わなければ片麻痺、失語などの脳局所症状はみられません。なお、出血が高度であれば意識障害をきたし頭痛を訴えることはできません。神経症状として髄膜刺激症状が認められることが多くあります。

中枢症状

激しい頭痛
悪心・嘔吐
神経原性肺水腫
身体所見
項部硬直(首の硬直)
neck flexion test
jolt accentuation(首を横に振ったときに頭痛が強くなる)
Kernig’s sign

破裂部位と神経症状

内頚動脈-後交通動脈分枝部   一側の動眼神経麻痺
前交通動脈          一側または両側下肢の一過性麻痺、精神症状、無動性無言、無為
中大脳動脈          片麻痺、失語
眼動脈起始部の内頸動脈瘤   一側の失明や視力障害
海綿静脈洞部の内頸動脈瘤   目の奥の痛み
脳底および椎骨動脈瘤     動眼、外転、滑車、三叉神経障害、下部脳幹神経障害

 

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