冠動脈の閉塞、または狭窄によりそれより先の血流領域が心筋壊死に陥った状態をいいます。
目次
分類
梗塞発症後の時間経過による分類
- 急性心筋梗塞(AMI)
- 陳急性心筋梗塞(OMI)
梗塞部位による分類
- 前壁梗塞
- 側壁梗塞
- 後壁梗塞
- 下壁梗塞
症状
- 30分以上継続する激しい胸痛があります。
- 聴診でⅠ音減弱、Ⅲ音、Ⅳ音の聴収、心膜摩擦音(2~3日後)が聴かれます。
- 心電図では尖鋭T波、ST上昇、異常Q波が見られます。異常Q波とは心筋梗塞で見られる深くて幅の広いQ波のことです。Q波の深さがR波の高さの1/4以上、かつQ波の幅が0.04秒以上の場合、心筋梗塞と定義されています。
- 血液検査でWBC上昇、CK上昇、GOT上昇、LDH上昇、CRP上昇、血沈上昇、心筋ミオシン軽鎖Ⅰ、トロポニンT上昇が見られます。これらを心筋壊死所見とします。
Killip分類
心筋梗塞が原因の急性心不全によく用いられる分類です。
Ⅰ群(group A):不全の徴候なし
Ⅱ群(group B):心不全・湿性ラ音聴収域<全肺野の50%・Ⅲ音・静脈怒張
Ⅲ群(group C):肺水腫・湿性ラ音聴収域≧全肺野の50%
Ⅳ群(group D):心原性ショック・血圧90mmHg以下・末梢循環不全
治療
- 発作時はまずは安静にして酸素投与を行います。
- 胸痛がある際は塩酸モルヒネを使用します。
- 心因運動負荷に対しては硝酸薬(ニトログリセリンなど)の点滴静注、β遮断薬を使用します。
- 血栓予防に対してはアスピリンを主に使用します。
- 心室期外収縮(PVC)に対してはリドカインなどを投与し、VT、VF等の致死的不整脈を予防します。
- 心筋梗塞に伴う心不全に対してはフォレスター分類に基づいて治療を行っていきます。
- 胸痛が持続する場合、または発作後12時間以内の場合は冠動脈造影(CAG)を行い病変部位を確認後可能ならば経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、血栓溶解療法を行います。
- PCI不適応例には冠動脈バイパス術(CABG)を行います。(CABGの看護)左冠動脈主幹部の50%以上の狭窄、三枝病変、左冠動脈前下行枝付近部の高度狭窄がある場合はCABGの適応となります。
- 緊急カテーテルが可能な施設では経静脈的血栓溶解療法(IVCT)を行います。
心電図の経時的変化
- 梗塞直後:T波増高
- 6~12時間後:ST上昇、異常Q波
- 2~3日後:ST下降、異常Q波
- 1~4週間以降:冠性T波、異常Q波
- 1年以降:異常Q波は残る
☆心筋梗塞のごく初期では、心電図が正常であることがあります。心電図が正常であっても心筋梗塞は100%否定できないため注意します。
☆心内膜梗塞では、心電図の異常Q波がみられないことがあり重症の狭心症との鑑別が困難なことがあります。その場合、血液検査での心筋壊死所見によって鑑別します。
☆数か月ないし数年後に陽性T波に戻ることがありますが、長年にわたって冠性T波を示すこともあります。
心電図での心筋梗塞の部位診断
梗塞部位 **梗塞波形が出現する誘導 **主な閉塞枝
前壁中隔 V1,V2,V3,V4 左前下行枝
広範前壁 Ⅰ,aVL,V1,V2,V3,V4,V5,(V6) 左前下行枝
側壁 Ⅰ,aVL,V5,V6 左前下行枝、左回旋枝
高位側壁 Ⅰ,aVL 左前下行枝、左回旋枝
下壁 Ⅱ,Ⅲ,aVF 右冠動脈
純後壁 V1,V2でR波増高 左回旋枝。右冠動脈
心筋梗塞の看護
- 糖尿病患者や高齢者は、心筋に虚血があっても胸痛を訴えないことがあるので注意します。
- 高齢者では、胸痛が比較的軽度で、呼吸困難を主訴とする心不全合併症例が多くあるので注意します。
- 塩酸モルヒネは呼吸抑制を起こす可能性があるため、使用時は呼吸状態に注意します。
- 塩酸モルヒネは末梢静脈拡張による前負荷軽減をもたらすため、循環変動に注意します。
- 急性期の前壁梗塞では90%にPVCを合併します。VF、VTへの移行に注意する必要があります。PVCを合併する場合はリドカインによる治療を第一選択とします。VT、VFが出現した際は前胸部叩打、カウンターショック、リドカイン投与を行うことがあるため叙細動、救急カートの準備を行います。
- 心不全、心原性ショックを合併する場合はカテコラミンの使用行われます。また状態によっては大動脈バルーンパンピング、PCI、冠動脈バイパス術(CABG)を行うこともあります。緊急カテーテル治療、手術準備などをしていきます。
- 右冠動脈(下壁)の梗塞では房室ブロックを合併する可能性があります。硫酸アトロピンの投与や、一時的なペーシングを行うことがあります。薬剤の準備を行い、ペーシングの準備を行っておきます。
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